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海水魚飼育における雑談46



48.採集した豆チョウの混泳


2016年の採集シーズン真最中ですが、房総半島で大抵の人が採集可能なチョウチョウウオの仲間の混泳に関して、今回は書こうと思います。

ただ、採集そのものや採集魚の飼育(濾過や水質)に関しては、いくつものHPやブログがありますので、一般的な事はそちらで見てください。私の場合、あくまで自分の経験上のことしか書けませんので。



潜って採集する人はともかく、大部分の人は磯でタイドプール巡りか背が立つ程度での泳ぎながらの採集になると思います。確かに2〜3メートルの深さをものともせずに採集を行う場合、房総半島でもそれなりの種類を捕まえることが出来ます。ただ潜っての採集には相応の装備と練習と慣れが必要です。

その点、タイドプール巡りや背が立つ深さでの泳ぎ採集は誰でもできるため、初心者にも抵抗無く行えるため対象者も多いように思います。

私の場合、それに加え漁港採集も行っています。というより、最近目が悪くなってきたため(私は近視と乱視の両方で、以前より乱視が進んだため)、度付きの水中眼鏡は水中では良いのですが、立ち上がって浅いところを歩こうとすると水の中がよく見えずまともに歩けなくて危ないため、昨年からはとうとう漁港採集のみになってしまいました。



ということで磯採集に行った方々が採集する可能性が高い魚は、おそらくチョウチョウウオ類ならばチョウチョウウオ(ナミチョウ)、トゲチョウ、フウライチョウあたりでしょう。

今年は例年に比べ大体1ヶ月半程遅いように思いますが、ナミチョウは通常ですと早ければ6月終わり頃、遅くとも7月中頃には磯に出現します。トゲチョウとフウライチョウは、ナミチョウより少し遅く7月後半には磯に姿を現します。

この3種に加えアケボノチョウ(去年は少なかったですが)とチョウハン(こちらは去年比較的多かったです)は、初心者でも採集が難しくない種類ではないでしょうか。



ナミチョウは房総辺りの磯や漁港では比較的数も多く、捕まえるのが案外容易です。しかし意外といえば意外ですが、ナミチョウをきちんと体形良く成長させ、長生きさせている人はあまり多くないように思います。

体に対して目が大きく感じられたり、体高が本来の場合より低くなったり、といった個体になってしまう場合が結構あるのではないでしょうか。これは以前も書いたように、成長期に十分な栄養を取ることができなかったり、飼育スペースが狭すぎることによって起こると考えられます。

まず餌付けですが、ナミチョウの場合、冷凍餌やアサリなどの生餌にはすぐ餌付きますが、フレークや粒餌等の人工餌への嗜好性や餌食いを考えると、どちらかというと餌付け難い部類に入ります。

ただぶっちゃけた話、冷凍ブラインシュリンプだけでもそれなりに元気に大きく成長させられます。そこからフレークへの移行はそれなりに上手くいくことも多いのですが、さらに粒餌を食べるようにするのはコツがいるような気がします。

経験上、なるべく早く冷凍餌や生餌から人口餌に切り替える方が良いと思いますが、あまり極端なことをすると痩せさせてしまうのでよく観察しましょう。まあ私の場合、別に粒餌を食べるようにできなくても形良く成長させ、長生きさせることは可能なので、あまり気にしていないのですが。

最初は冷凍ブラインシュリンプだけで育てても、しばらくして乾燥ブラインシュリンプに餌付く個体は結構多かったことと、長く飼っているとフレークぐらいは食べるようになることもあるので、とにかく何か食べさせて痩せさせないようにすることが大事だと思います。

組み合わせに関しては、自分の2/3以下の先住魚にも圧倒される等、比較的気が弱い面があるので、なるべく先住魚にしてやるとよいでしょう。

争いを起こし易いのはチョウハンで、トゲチョウやフウライチョウとはあまり争いません。やはり体色や文様が似ている種類とは争いやすいようです。例え1週間でも、その水槽に慣れて餌を食べるようになっていれば、後から入ってきたチョウハンに対して結構強く出たりもします(あまり追い回したりはしません)。

したがって、チョウハンよりは先に水槽で泳がせるようにすれば、後はあまり組み合わせで悩むことはないと思います。またナミチョウは同種の複数飼育も比較的容易ですので、120cm 水槽をお持ちでしたら2〜3匹入れて群れる姿を見ることもできるでしょう。



チョウチョウウオ






フウライチョウは例年、トゲチョウと共にナミチョウに次いで多く見かけるチョウチョウウオ類です。8月初めに採集に行き、漁港やタイドプールでこの白い豆チョウを見かけると、今年も採集シーズンが本格的に始まったなと、何だかホッとします。

このようにナミチョウと同じく採集する機会が多く、採りやすい種類にもかかわらず、案外飼育に関して苦手意識を持っている人も多いように思います。

餌付けに関しては比較的容易で、冷凍アサリ⇒冷凍ブラインシュリンプ⇒乾燥ブラインシュリンプ⇒フレーク餌⇒粒餌という一般的な順で餌付けを行えば、それ程苦労することなく最低でもフレーク餌は食べるようになるでしょう。私の場合、まずほとんど粒餌を食べるようにしていますので、水質さえきちんと管理・維持できていれば初心者の方でも餌付けられると思います。

フウライチョウの飼育に関しての一番の問題は、この魚がナミチョウ同様、比較的性質が温和というか他のチョウチョウウオに圧倒されやすい事だと思います。同種同士では激しく争いますし、特に同じように採集の機会が多く体形や色、文様が似ているトゲチョウとの組み合わせにも注意が必要です。

このトゲチョウとの組み合わせに関しては、観賞魚誌や他の方のHPでも触れられていると思いますが、上手く混泳させるコツはそれほど大したことではないのです。フウライチョウをその水槽の先住魚にしてやり、十分に餌付け、水槽に慣れてからトゲチョウを入れればよいのです。その際、できればトゲチョウの方がフウライチョウより小さいと、なお良いでしょう。

おそらくフウライチョウがトゲチョウを追いかけまわし、慣れていないとトゲチョウがやられてしまうのではないかと思うかもしれません。しかしその逆な状態になるより、はるかに事態としては楽なのです。

トゲチョウはフウライチョウに比べ、性格的にタフで餌付きも同じくらい良い種類です。したがって、水槽内でフウライチョウ>トゲチョウ、というパワーバランスを作ることが重要だと私は考えています。

私の経験ではその後水槽内での成長速度に差が付き、トゲチョウの方が大きくなってこのパワーバランスが逆転しても、90cm水槽以上であればそれなりに折り合いをつけて致命的な状況になることはほとんどありませんでした。



フウライチョウとトゲチョウ






トゲチョウに関しては、ナミチョウやフウライチョウを餌付けることが出来、きちんと飼うことが出来る方であれば、特に飼育に問題はありません。

餌付きはチョウチョウウオの仲間の中でもよい方ですし、性格的にもタフです。この3種に限って言えば、何度も採集に行ける環境であれば、フウライチョウ、トゲチョウの順番で時期をずらして採集してくれば、残念な状況になることは少ないと思います。



まあそうは言っても、採集に行って捕まえることが出来れば大抵の人は一度に採ってきてしまうと思います。そのような場合、もし個別に分けて餌付けが出来る飼育環境であれば問題ありませんが、一つの餌付け水槽または検疫水槽の場合、トゲチョウをあえて隔離ケースに入れてしまうというのも一つの方法です。

なお隔離ケースに入れるのは問題を起こす魚たちの強い方にするべきです。これを逆にしてしまうと悲劇につながることが多いので、注意した方が良いでしょう。

こうしてフウライチョウを先住魚にして立場を強くしてやれば、後々混泳させても争いが弱まることが多かったです。なお、採集が同時の場合でも、フウライチョウがトゲチョウよりも一回り程大きければ同時に入れて混泳させても激しく争わないことが多いようです。



残るチョウハンとアケボノチョウですが、チョウハンは餌付けに関してナミチョウと似たところがあるので、人口餌にしっかりと餌付けたい場合は生餌や冷凍餌から切り替えるタイミングをなるべく早くした方が良い結果が得られます。比較的餌付きやすい方に入るので、タイミングさえ間違えなければ最低でもフレークは食べてくれるようになりますし、粒餌を食べるようになるのもナミチョウよりは楽だと思います。

アケボノチョウははっきり言って、これら5種の中では最も餌付きやすく、また性格的にもタフで水質変化にも強いです。今シーズン採集してきた2匹も、採ってきて2〜3日後には粒餌やフレークを食べるようになったことから、餌付きの良さがわかってもらえると思います。このように餌付けも組み合わせも特に問題ないでしょうから、チョウハン同様最後に水槽に入れた方がよいでしょう。



チョウハン




アケボノチョウ






私はここ2年間の採集の結果、今年のシーズンはナミチョウもフウライチョウもトゲチョウも、ついでにチョウハンも持ち帰ることはできないのですが、この3種はチョウチョウウオ類の中でも比較的好きな種類になるので、多く採ることが出来るとしても大事に飼ってあげてほしいと思います。私が書いた以外にも、フウライチョウとトゲチョウを混泳させるテクニックはあるでしょうから、採集だけでなく採集魚の長期飼育も頑張ってほしいです。




セグロチョウ(今シーズン採集したのでおまけ)












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