トップ プロフィール  海水魚今昔  濾過とは 水槽の立上げ  日々の管理  海水魚の病気と対応 雑学


海水魚飼育における雑談36



38.楽々管理の小型水槽を考える2


さて今回の内容には異議のある方も多いかもしれませんが、あくまで私の考え方ですのでご了承ください。では前回お見せした表より,@からFまでを順々に検証していきましょう。



@底面フィルター

@のメリットは,Aや小型のC等に比べれば水槽の底面積を丸々使える分,濾材量と硝化能力ははるかに高くなります。基本的に濾材は小豆大のサンゴ砂(10番)を使いますから,エアーリフトではなくパワーヘッドを使用した場合Bと比べて濾材能力もそん色ありません。そして何より安価です。

それに対してデメリットは,メンテナンスの際に飾りサンゴや岩をどかすか外に出さなければならないため,魚に対する負荷が大きい事,またどうしてもフィルターの下に細かいデトリタス等が溜まってしまうため,定期的に濾材を全部外に出して底面フィルターを取り外す大掃除が必要なことです。

私の場合1ヶ月に1回の定期メンテナンスの際に,毒抜き棒という道具を使って上手く濾材間やフィルター下のゴミを吸い出していたため大掃除の間隔は数年に一度程度で済んでいたのですが,その毒抜き棒が現在どこのメーカーやショップでも製造しておらず,自作以外に入手法が無い事が一番のデメリットになるかもしれません。

なお底面フィルターの場合,濾過バクテリアが硝化反応の際に必要とする酸素は溶存酸素量に依存するため,高い濾過能力を十全に発揮させるために水槽内で強いエアーレーションを行った方が良い事は言うまでもありません。



A淡水用上部モーターフィルター

Aのメリットは,初心者用の熱帯魚セットに付属していることも多く,安価にしかも手軽に入手できること,濾材の量が少ないため全部取り出して掃除しても@よりは楽なこと,そして@と比べて物理濾過用のウールマットを簡単に設置できることです。

デメリットは濾材量が少ないため硝化能力は@からFの中で最低であり,あまり多くの魚を飼えない事,また付属のモーターが海水で使用する場合あまり耐久性が高くない事になります。

もちろん,これだけでも海水魚飼育は可能ですが,私としては濾過能力がギリギリというのは好きではないので,単体での使用はあまり考えていないシステムです。



B海水魚用上部フィルター

Bのメリットは,海水魚ショップのオリジナル商品や,観賞魚メーカーから既製品が販売されておりセットが楽なこと,物理濾過用のウールマットを併用できること,また奥行や高さ(主に高さですが)がAに比べて大きくなっており濾材量がある程度十分入るようになっていて硝化能力が高い事です。

デメリットは相応の揚水ポンプを使ったり,Aに比べると生産量が少ないためにどうしても高価になってしまったりする事,水槽上部の半分が塞がれて魚や飾りサンゴの出し入れに制限がかかる事(これはAも同じですね)ではないでしょうか。



C密閉式外部フィルター

Cはエーハイムが有名ですが,メリットとしてはメーカー推奨のサイズより一つ大きな製品を選択すれば硝化能力的には問題ない事と,オプションパーツが充実しており改良がしやすい事,また音が静かでメンテナンスも楽な事でしょう。

デメリットは密閉式であるが故に飼育海水の溶存酸素量に濾過能力が左右されるのですが,メンテナンスを怠るとフィルター内のゴミ取用スポンジにも濾過バクテリアが繁殖して,本来の生化学濾過用濾材部分に接触する時には溶存酸素量がかなり減ってしまう可能性がある事です(A,Bは水槽中のエアーレーションの他に,ウールマットを通る際に空気と接触して取り込む機会があります)。また付属品を揃えた場合,値段もそれなりに上がってしまいます。



D吹上式

Dの場合,メリットはこれまで検証してきた@からCまでに比べて物理濾過能力,生化学濾過能力が一番大きい事でしょう。また@に比べ底面フィルターの下にゴミが溜まるスピードは,かなり遅くなります(とは言ってもメンテナンスフリーとまでは言えません)。さらに飾りサンゴや岩組の下の部分にも死水領域ができないことは,他のシステムでまず無理なため大きなメリットとなります。

一見良いところずくめのシステムですが,デメリットもそれなりに存在します。まずは現在,観賞魚メーカーはおろか海水魚ショップですら既製品という形で提供するところがないため,上部フィルターと底面フィルターを繋ぐ吹き落としパイプを自作する必要がある事,またきちんと底面フィルター全面から海水が吹き上がるためには,揚水ポンプの能力と上部から底面への流量のバランスを取る必要があるのですが,各自が試行錯誤して調整しなければならない事です。

底面フィルター上に敷くサンゴ砂等を細かいものにした場合,下手をすると上部フィルター側がオーバーフローして海水が溢れ出ることもあります。また使用する底面フィルターも昔の製品に比べると妙に厚みが薄くなっているものが多く,上手く吹き上げられるかどうかは試してみないと分からない事も挙げられます。

そういう意味では,密閉式外部フィルターと接続させて吹上式とすることを考慮された底面フィルターがメーカーから以前出ていましたので,組合せを前提としている製品を始めから使った方が楽かもしれません。ただその場合,上部フィルターなら底面へ海水が落下する際に空気を巻き込む機会がありますが,密閉式との組み合わせでは無理なため,底面からの吹上は上手くいっても溶存酸素量が律速となってシステム本来の硝化能力を発揮できない可能性はあります。



E上部フィルター+底面フィルター

Eの上部フィルターと底面フィルターを独立併用させた場合,メリットもデメリットも@,A,Bが持つものがそのまま当てはまりますが,硝化能力はDよりも高くなります。まあ最大のデメリットは,水槽外観の見た目があまり良くないことかもしれません。



F流動フィルター

Fですが,かつて売られていた砂状の濾過メディアを使用する製品が入手可能であれば,比較しているシステムの中で最も消化能力が高い事が最大のメリットです。

現在売られている濾過メディアはビーズ大のものであり,流動しやすいように比重などに工夫が凝らされているようですが,実際のところどの程度の濾過能力があるのか私にはわかりません。何しろ現在売られている製品は妙に小型のものばかりで,砂状の濾過メディアに比べポンプ停止時のメディア逆流によるポンプ機能低下やメディアの流出などのデメリットが解消されているものの,昔の製品よりは濾過能力が低いとしか思えないのです。私が使っている流動フィルターは知り合いに作ってもらったものですが,現在のビーズ状濾材に適応したものを作ってもらえばおそらく最強のように思います。

それに対してデメリットですが,密閉式外部フィルターと同様にその高い生化学的濾過能力を発揮するためには,十分な溶存酸素量が必要となります。そのためにはOF水槽が最も適しており,私はサンプ内で強力にエアーレーションを行って対応していますが,60cm規格水槽ではそのような対応は不可能です。

また,現在売られているメーカー品では外掛け式フィルターのような使い方になってしまうため,どうしても揚水ポンプのストレーナー部分にスポンジフィルターを付けたり,密閉式外部フィルターと組み合わせるような形で物理フィルターを別途取り付ける必要が出てくることになります。



以上,一通り考えられる濾過システムのメリットとデメリットを挙げてきましたが,物理フィルターを上手く設置できるのであれば,Fの流動フィルターが管理も楽だし濾過能力もずば抜けています。ただ現在のビーズ状濾過メディアを使用する小型の製品に対して,実際に使用経験がないため自信を持って採用できないのです。

結果として,全体のバランスやメンテナンスのし易さ,値段等で最も無難なB海水魚用上部フィルターを使ったシステムを選択することになります。









戻る/次頁へ
inserted by FC2 system