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海水魚飼育における雑談37



39.楽々管理の小型水槽を考える3


さてこのシリーズも今回が最後です。前回以上に、今回の内容は個人の好みが出ると思いますが、あくまで私の好みということでご了承ください。



では最後に、どのような魚をメインに飼育するかをある程度決めなければなりません。そうしないと無計画な衝動買いをしてしまう可能性が高いからです。

海水魚用上部フィルターを使えば、60cm 規格水槽でも10〜12cm 程度のヤッコを飼う事は可能です。ただ泳ぐスペースや隠れ家を作る事を考えると、テリトリーという面からは1匹飼いを選ぶでしょう。なぜなら狭さから生じる喧嘩等のストレス要因を排除でき、飼い主である私も組合せで悩むことがありませんから。

しかし10cm程とはいえ、大型ヤッコどころか中型ヤッコであるキートドントプルス属やアポレミクティス属の幼魚を飼うのでさえ、1〜2年ほどで空間的にも水量的にも不満を覚える事になります(本来大きくなるはずだが飼育環境が狭いことへの適応で魚の成長が阻害され、所謂盆栽のように小さい未成魚・成魚となってしまうため)。

ということでヤッコを飼うのであれば、成長してもせいぜい10cm程度であるケントロピーゲ属に落ち着きます。さてケントロピーゲ属のヤッコを飼うのであれば、何も大きさ的にMaxな個体ではなく少し小さ目(6〜7cm)のものを2匹入れる事は誰でも考えると思います。

しかし、濾過能力的には可能であっても幅60cm、奥行30cmしかない水槽では、隠れ家を上手く2か所作る事が出来たとしても距離が近すぎるため、どちらか1匹が両方を占有しようとして喧嘩になる可能性が高いです。したがってヤッコを入れるなら、長期飼育を前提とした場合ケントロピーゲ属のヤッコが1匹となります。

メインとするヤッコ以外のメンバーとして、経験上5cm程度の魚を2〜3匹か、3cm以下の魚を5〜6匹程度は余裕で混泳が可能です。

候補としてはチョウチョウウオの仲間やハギの仲間も考えられますが、基本的にこれらの仲間も本来10cmを超える大きさに成長しますから、中型ヤッコの幼魚と同じ理由で除外します。除外の理由としてはもう一つあり、設置場所にもよりますが60cm規格水槽では水量が少ないため気温の影響を受け易い事を考えると、あまり白点病に罹りやすいとされる魚も入れない方が無難だからです(対処は難しくありませんが、わかっていてリスクが高い方法を選ぶ必要はありません)。

ベラの仲間はイエローコリスやライムラス、トカラベラやノドグロベラ等を入れたいと思います。この仲間は自然下でもそれ程大きくならない種類(ライムラスは18cmになるらしいですが、私は残念ながら10cm程の個体しか見たことがありません)ですから、60cm規格水槽でもそれ程問題なく過ごせるでしょう。私が現在稼働させている3本の水槽は全て底砂を敷いていないので、砂に潜るタイプで小さなベラは可哀想なので飼っていないことも候補となる一因です。

後はゴンベの仲間かバスレットの仲間といったところでしょうか。他にも小型のタナバタウオの仲間やハタタテハゼの仲間、プテラポゴン等は、本来こうした小型水槽でじっくりと買い込みたい種類ではありますが、個人的な好みの問題で今回は除外します(これらの魚だけだと、私としては何となく物足りなく思ってしまうためです)。



さていよいよ具体的に候補を絞り込んでいきます。私の個人的な好み全開ですが、ヤッコでしたらケントロピーゲ属のマルティスピニス、ベラはイエローコリス、それにベニゴンベ。後は色彩的に青か緑がほしいので、デバスズメを4〜5匹(彼らはスターティングフィッシュも兼ねています)。これぐらいで止めておくのが、長く飼うためのポイントだと思いますが、遊泳空間が狭い事を考えるとこれでも本来は入れすぎかもしれません。



ここまで決めてしまえば、後の作業はある意味単純です。必要な器具を買い揃え、システムとして組み上げて稼働させればよいだけですから、私を含めてこの趣味をそれなりの年数楽しんでいれば、良く慣れ親しんだ内容でしょう。

エアーレーションは行った方が良いので、エアーポンプとチューブ、エアーストーンは必要です。また、センサーとヒーターが一体型の電子サーモスタットがコンパクトで良いでしょう。

照明は蛍光灯でも構いませんが、少し奮発してLED照明の方が長期的には財布に優しいかもしれません。水槽台はあった方が格好良いですが、別に50kg の重さを構造的にしっかりと支えることができる物の上に置けば不要です。後は4つ口以上のコンセントを用意すれば、海水魚水槽一式の完成というわけです。

立ち上げに関しては、どんな水槽でもやる事は同じですから割愛しますが、後々の日常管理を楽にしようとすれば、このように最初にしっかりと考えて自分なりの方針を決めておくことが重要です。

まあ濾過能力さえ十分であれば、初期投資を少なくして労力を惜しまずに管理するか、初期投資を十分に行い管理の労力を減らすか、の違いです。悪く言えば、労力や手間をお金で買うのかどうかということでしょうか。

それでも、高価な器具を導入しても理に叶った使い方をしなければ、期待した効果を得られないばかりか逆に悪影響が出る事さえあります。

殺菌灯はあった方が確かに管理は楽になりますが、無くても海水魚の飼育はできます。オゾナイザーやプロテインスキマーも同じです。はっきりいって、ライブロックは有っても無くても、バクテリア製剤や種砂を適切に用いれば大した違いはありません(多少立上げが早いかどうかぐらいで、本当に先のことを考えれば逆にライブロックを入れた場合安定化まで時間をかける必要があります)。

初心者の場合、最初はよくわからないかもしれませんが、一度最低限の設備で海水魚を飼育してみれば実感として理解できるかもしれません。そのためにも、アンモニア、亜硝酸用のテスターは確実な立上げには必須と考えています。



さて、これで当初決めた魚を入れれば完成です。ただなぜか、いざ買おうとするとなかなか手ごろな個体が入荷しないという、変なジンクスもあります。今回選んだ中では、マルティスピニスは案外入手しづらいと思います。

せっかく迎え入れるのですから、調子が落ちている個体やサイズ的に不本意な個体を焦って入手しようとせず、じっくりと腰を据えて待った方が最終的には良い結果となります。このように新しく水槽を設置するならどのようなシステムを作り、どのような魚を飼うか、ということを考えるのはとても楽しい作業です。

実際には場所的な問題(換水が楽にでき、電気コンセントが近い)が解決しないので、私がオブジェと化しているNewスティングレイ60cm水槽を稼働することは当面無理だと分かっています。ということで、せめて頭の中で考えることぐらいは電気代や場所といった現実の問題を忘れ、自由自在に楽しみたいものです。









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