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海水魚飼育における雑談58



60.活性汚泥法と流動濾過


これまで度々書いてきたように、私は90cmオーバーフロー(OF)水槽と60cmOF水槽(どちらも奥行きと高さが45cm)の濾過システムに流動(床)濾過槽、より詳しく書けば「流動砂濾過槽」を使用しています。「濾過とは」にも書きましたが、この流動濾過は下水処理に使われる浮遊生物法、よりポピュラーな言い方をすれば「活性汚泥法」を応用した方式ですが、この活性汚泥法というのがどういったものか知っている方はあまり多くないかもしれません。今回はその辺りに触れたいと思います。



活性汚泥法


活性汚泥法とは簡単に言えば、まず下水に含まれる大きめのゴミを沈砂池で除去し、さらにより小さいゴミを沈殿池した汚水に大量の空気を送り込むことで、汚水を攪拌し酸素を補給して汚水中のバクテリア(微生物)を活性化させ増やす(培養する)ことによって水を綺麗にする方法です。

このようにして増やしたバクテリアが汚水中の窒素化合物(アンモニアや亜硝酸等)を含む有害物質を無害化するのですが、ここで重要なのはバクテリアが一連の反応を行うためには十分な空気(酸素)が必要であり、適度な攪拌によって常に餌となる有害物質を取り込めるようにすることです。ここまでくると、私達が海水魚飼育でよく聞く濾過(硝化反応)とほぼ同じであることがわかります。

汚水中のバクテリアは、表面に粘着物質を出すため凝集しフロックと呼ばれる塊を作りますが、このフロックは水中を漂う微細な泥のように見えるため、活性汚泥と呼ばれるのです。

下水処理ではこの後、最終沈殿池などで活性汚泥を沈降させ、上澄みの水(処理水)と分離することでバクテリアが関与する工程は終了となり、その後処理水は塩素で消毒されることで川や海に排水されることになります。また、分離された活性汚泥は、一部を再び反応槽へと戻して下水処理に使われ、残りは汚泥処理施設で処理されます。



流動床濾過法


養殖関連の資料を見ると、この砂状濾材を用いたものは大規模な養殖施設で使用され、その利点は濾材の比表面積が非常に大きい事と書かれています。極小の砂や二酸化ケイ素、プラスチック製ビーズを使用した場合、比表面積は4,000〜45,000m2/m3 になるそうです。

比表面積を比較すると、4〜5mmφのビーズ状濾材を用いた流動濾過の場合1,050 m2/m3 、10番サンゴ砂やそれ以上の大きさのサンゴ砂を使った上部フィルターや下部フィルターの場合100〜800 m2/m3 になるそうですが、この数字は養殖用の大規模な濾過システムでのことですから、普通の家庭用アクアリウムで同じ数値になるかどうかはわかりません。

ここで参考になるのは、以前10番サンゴ砂を濾材とした90cmOF水槽(東京にいたころに使用)と、現在の砂状濾材を使った90cmOF水槽の比較です。両方の水槽で実際に海水魚を飼育した結果、ほぼ同程度の濾過能力(飼育魚収容数)を持っているように思われます。

以前の90cmOF水槽は濾材として10番サンゴ砂を約20kg使用していましたが、現在の流動濾過槽は砂状濾材を500〜600g程使用しています。実際に多孔質のサンゴ砂や単純な球状ではなく角ばった形状である流動砂濾材の表面積を算出することは難しいので、単純な重量比で考えると同等の能力を発揮するための10番サンゴ砂と砂状濾材は最低でも1:33〜40 になると考えられるのです。濾材重量を1/30以上コンパクトにできるということは、かなり嬉しい事だと思います。



さて最近は砂状の流動用濾材はほとんど売っていません。現在普通に入手できるものは、4mmφのビーズ状流動用濾材(ポリエチレングリコール含水ゲル)ですが、単純に考えれば砂状濾材と4mmφのビーズ状濾材では、比表面積において4〜40倍の差があると考えられるのです。

仮に最低値の4倍だとしても、500gの砂状濾材と同じ濾過能力を得るためには2kgのビーズ状濾材を流動させなければならないことになります。以前私は、感覚的にですが砂状流動用濾材と同じ濾過能力を得るためには、ビーズ状流動用濾材が最低でも砂状濾材の3倍量は必要だろうと考えていました。しかしこのデータを知ってしまうと、やはり最低でも4〜5倍量のビーズ状濾材が必要だと考えた方が安全です。

新しい水槽を立ち上げる際には、今度はビーズ状流動濾材を使ってみようと常々考えていたのですが、濾過槽として流用しようと目星を付けていた既存製品(バイオペレットリアクター)はほぼ1機種に絞られてしまいました(ただし想定している機種でも濾材は2kg入るかどうかです)。2台使えば問題ないのですが、今度はサンプのサイズ的な問題が生じてしまい、頭が痛いです。









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