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海水魚飼育における雑談52



54.海水魚ショップ


様々な面でお世話になる海水魚ショップですが、さて昨今の海水魚雑誌の広告欄を見て正直に言わせてもらえれば「ずいぶん減ったな」というか、「メーカー関係がほとんどでショップの広告は殆んど無い」というのが現状のようです。

私が住む埼玉県を見てみれば、海水魚を大規模に扱っているショップは私が知るだけでも「アクアライズ大宮店」、「ビーボックスアクアリウム八潮店」、「クラウンフィッシュ」と3店はあるのですが、1誌のとある号を見ると広告を出しているのはゼロでした。

雑誌というのは購読者が多い事(読者による購入費)よりも広告収入の方が遥かにコストパフォーマンスが良いはずなので(我々読者からの売り上げは薄利多売で利益率が悪い)、これで雑誌の発行がよく継続できているな、というのが素直な感想です。まあ、出版社は出版社でいろいろと企業努力しているのでしょう。



先ほどの海水魚誌の2002年頃の広告Indexを見ると、2016年よりずっと多くのショップが名を連ねています。当時と今の景気の状況を考えると、広告費が負担となって出さないショップも多いのかもしれません。しかし昨今の雑誌広告ショップ数と比例するように、実際に海水魚ショップの数は2002年頃の方がはるかに多かったのです。

これまで何度か海水魚飼育のブームというものがあったのですが、バブル景気が弾ける前後で結構な数のショップがオープンし、やがて淘汰されたものの、2000年あたりから再び急に海水魚ショップが増えた時期がありました。

原因はおそらく、バブルが弾けたといってもまだまだ可処分所得はそれなりに多かったですし、日本式ベルリンシステムが完成に近づき周辺器具も便利なものが次々と発売されたために、ハードコーラルの飼育熱が一気に広がったためではないかと思います。

それが2003年の映画「ファインディング・ニモ」の公開によるカクレクマノミ・ブームと連動し、プロショップと銘打つものの実態が伴わない素人に毛が生えたようなレベルのショップまで現れる始末でした。

さすがにそんなショップは数年以内に淘汰されていきましたが、ブームが起きた業界は衰退するという例え通り、今の海水魚業界は長期間景気があまり良くなかった影響もあって将来に明るい展望が見出しにくいのかもしれません(無論、殆どショップの広告が無無くなった海水魚誌に関する業界内の反応はある程度聞いていますが……)。



私は今でも無脊椎動物(ハードコーラル、ソフトコーラルを問わず)には興味が薄いため、昔ながらの飾りサンゴやデスロックでレイアウトした海水魚水槽で魚達の混泳を楽しんでいます。したがって私の場合、無脊椎動物を飼育した経験は磯で捕まえたヒライソガニや購入したカブトガニ、クリーナーシュリンプ程度です(餌として採集してきたイソスジエビ等を入れることはありましたが)。

しかしその分、海水魚飼育に関しては寄生虫症(白点病、ウーディニウム病、トリコディナ病、ハダムシ症、エラムシ症)を極力出さないような環境的配慮と、発症したとしても即座に治療可能な準備と知識を備えています。それでも腫瘍や濾過槽掃除を荒っぽくやった際の細菌感染症など、治療方法がないものや進行が早くて治療が間に合わずに悪化して落としてしまった魚はいますし、原因をどうにも特定できないまま死なせてしまう事もあります。

アマチュアの私ではこの程度までしか対応できませんが、プロと銘打ったショップであれば最低でも私より上の知識と技術を持っていてほしいというのは贅沢な希望でしょうか。

少なくとも魚水槽であればライブロックなど必須ではないのですから使わず、きっちりと立ち上げて調子良く維持して病気が極力出ないようにし、発症しても速やかに治療を行い問題なく治す程度のことは、ショップならばできてほしいのです。

幸いなことに、長年営業して現在も残っている海水魚をメインにしているショップであればこのあたりのラインは越えているというか、そうでなければ何度も行かないので、私が今でも足を運ぶショップはみなこのレベルです(無論、行かなくなったショップでも高レベルの所はありますが)。

しかし、本当に2000年前後にあったショップには酷い所がありました。何しろ、魚混泳水槽でライブロックすら入れていないのに、白点病が上手く治せないというショップもありましたから。硫酸銅溶液を始めとした銅イオンの知識が不十分で、やたらと使用を怖がり結局悪化させて魚を殺してしまうのですから本末転倒も甚だしく呆れたのを覚えています。

また、淡水浴の際にpH調節をすることを知らないショップもありました。魚に関するショップの実力は、濾過システムと泳いでいる魚の状態、周辺機器の選択などからある程度把握することが出来ますので、ありきたりですがなるべく水槽内の海水がクリアーに見え、魚が健康で正常な動きをして、UV殺菌灯などをきちんと交換・管理しているショップであれば、ゆっくりと魚を観察しても良いでしょう。



ただしショップを継続するということは事業ですから、たとえ技術力が抜群に高くても利益を出して上手くいくかというと、そう簡単なものでもありません。なるべく原価を下げる努力とか、話題性を上手く作り出す等の普通の自営業と同じ経営努力が必要となります。

そういう意味では、中堅以上の歴史を持つショップは常に時代に合わせて変革し企業努力を続けてきたということです。客としてはショップに最低限求めるものは確かな技術(問屋で良い魚を見抜く力も含め)と情報を持つことですが、ショップの維持という面ではその他の様々な能力が求められ、大変な努力が必要となるのです。この先、きちんとしたショップがずっと残ることを望んでやみません。









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