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海水魚飼育における雑談41



43.銅イオンの残留


無脊椎動物を飼育している方にとって、硫酸銅溶液をはじめとした銅イオンは水槽内に絶対入れたくないものの一つでしょう。ハード、ソフトに関わらず、サンゴの類には銅イオンは劇薬です。

しかしスカンクシュリンプ等の一部の無脊椎動物は、銅イオンに対してある程度の耐性を持っています。そのため私は、魚水槽にクリーナーシュリンプを入れていても、白点病が出たら硫酸銅溶液を添加してしまいます(まあ滅多に白点病なんて出ませんが)。

そんな私でも、水槽内の銅イオンの残留には興味がありました。たまたまその影響を観察する機会がありましたので、今回はそのことについて書こうと思います。



私が使用している検疫水槽は、60×45×45cm OFで流動濾過槽というシステムで11年間稼働させています。とはいっても検疫水槽としたのは2013年4月の再稼働時ですから、新たに入手した検疫すべき魚を泳がせていたのは3年程です。その前の9年間は完全な飼育水槽として、キヘリキンチャクダイやメレディティエンゼルの幼魚をチョウチョウウオなどと一緒に泳がせていました。

最初の9年間で白点病やウーディニウム病、トリコディナ症が魚に発症したことは一度もありませんでしたが、検疫水槽として2年目の2015年9月末に、採集してきた豆チョウハンを発生源とした白点病(ナミチョウ、ホシゾラヤッコに感染拡大)が発生しました。

私は白点病に対して即座に銅イオン治療を行うので、0.2〜0.3ppm を維持するように5日間投与することで無事終息。その後は今現在まで白点病再発の兆候はありません。この検疫水槽はこの時が初めての硫酸銅溶液投与だったので、どのぐらい銅イオンが残留し生物に影響を与えるのか経過観察してみました。



既に10月半ばには、飼育海水の銅イオン濃度が投与前の0.1ppm 程度まで落ちました(私は人工海水を溶かすのに水道水を使っているので、硫酸銅溶液を投与しなくても初めからこの程度は入っています)。テスターを用いる限り、投与した銅イオンの残留はほぼ無いといえます。しかし人間のアレルギーなどを見てもわかるように、生物はテスターの検出限界以下の量でも敏感に反応することがあります。

私が観察指標にしたのは茶ゴケ(珪藻)、緑ゴケ、紫ゴケ(シアノバクテリア)等の所謂コケと呼ばれるもの達です。これらのコケはグリーンFゴールドや硫酸銅溶液の添加によって一時的に急減することが知られています。このコケ類が硫酸銅投与前のようなスピードで増えるようになるのに、どのぐらいかかるかを観察するという簡単なものですが、毎日となると意外に記録をとるのも面倒でした。



結果から言うと、12月初めの段階で、ようやく茶ゴケが水槽壁面や飾りサンゴを薄っすらと覆うようになってきましたが、硫酸銅溶液投与前に比べれば遥かに少ないと言えます。

以前は50L換水しても(全水量110L)2週間経てば水槽底面や後面、飾りサンゴはシアノバクテリアがすっかり覆ってしまい、次の換水直前にはそれが膜のようにベッタリとなっていたものです(茶ゴケや緑ゴケはその合間に少し存在する程度)。そのシアノバクテリアが2か月経っても勢いを取り戻さず、結局元のような勢いで各種コケが生えるようになったのは2ケ月半が過ぎた頃からでした。

これは他にこれまでと変えたものが無いため、銅イオンの影響と考えて構わないと思います。とは言ってもメイン水槽で硫酸銅溶液を使用した場合は、コケが生えない状態が続くことはせいぜい1週間程度でした。

メイン水槽はこれまで17年間動かしてきましたが、その間に何度か銅イオン治療を行っています。そのため、メイン水槽のコケ類には銅イオンに対する耐性があるのかもしれません。実際は専門の研究者でもない限りきちんとした検証はできませんので、あくまで素人の想像の域を出ませんから皆さんは軽く聞き流してください。



ということで、管理する私としてはコケの生え方が遅いので大助かりです。また泳がせている魚たちも特に銅イオンの影響は現れていません。

しかし銅イオンの水槽内残留という観点からは、2か月ぐらいの時間ではまだまだ影響が出るほど存在しているのかもしれません。あくまで私の元での1例ではありますが、参考になれば幸いです。









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