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海水魚飼育における雑談3



4.水槽構築計画


これから飼育システムのバージョンアップをしようと考えている方の参考になればと,私が現在の飼育システムをセットアップした時の背景を書いておきます。

海水魚を飼育し始めた頃は,まだ魚同士の組合せに関する知識も乏しく,またあらゆる魚達が真新しく魅力的に見えて今からすればあり得ないような混泳をしていたものです。しかし飼育歴が長くなると,だんだん過密状態での飼育が魚達にストレスを与え,体型や体色にも悪影響を与えることがわかってきます。

なお,ここでいう過密飼育とは濾過能力の観点からではなく,飼育魚のストレスを軽減するために余裕を持った混泳状態に対して過密というものです。

昔から言われているように,水槽をパッと見たときに泳いでいる魚達が少し寂しいぐらいが丁度良い,ということを理解するには経験が必要だと思ったものでした。

そこで今の場所に転居する際,総合的な新水槽構築計画を策定しました。システム的に言えば,これまでの経験を踏まえて120×60×50cmのOF水槽と決めました。もう今から15年程前です。これまでの経験から,ヤッコの成魚を泳がせるには奥行60cmは欲しいと思っていました。本当は高さも60cmにしようと考えていたのですが,メンテナンスを考えると手が届かない場所ができそうなので50cmにしました。

濾過槽はなるべく面積を広く取り,従来通りの小豆大サンゴ砂を濾材に採用。これは,これまで使用していた濾過バクテリアがたっぷりと繁殖した濾材をそのまま再利用できる利点がありました。

人間の引っ越しの2日前に新居に水槽をセットし,新たな濾材や飾りサンゴをセットした上で総水量が何リットルになるか測りながら真水を水槽と濾過槽に入れ,直接必要な量の人工海水を溶かしました。

2日間空回しの後,仮住まい中も維持してきた60×45×45cm水槽に使っていた濾材のサンゴ砂を新たに濾過槽に入れたサンゴ砂の上に敷き種砂とし,スターティングフィッシュ代わりに東京から持ってきた魚達を入れて立上げ開始です。



普通の方ですと,ここまでが水槽構築(計画)になるのではないでしょうか。しかしこれはあくまで飼育システムの設計及び構築にすぎません。水槽全体の構築計画とは,収容し飼育する魚達も含めて自分なりの完成形を目指すものだと,私は考えています。

したがって次に,自分の好みの魚をいかに無理なく混泳させるか,という課題をクリアーするための水槽構築計画を立てることになります。以降の飼育魚購入や採集は,それに従って種類や大きさを吟味した上で行う事になるため,ブレが出ることは許されません。

尤も水槽構築計画といってもそんな大層なものではなく,最優先目標(メインにする魚)を決め,それ以外の魚達はメインより大きくならない魚を選ぶだけです。その際,数年後の状況(成長した魚達の姿を前提として)を予想しておくことが重要でした。 

具体的には,将来的にメインとしたい魚より大きくならない事や,ハギやハマクマノミのように攻撃的な性格ではない事,を考慮します。その上で立てたものが以下の項目です。


1.最優先目標は,クイーンズランドイエローテールエンゼルの雄をメインとする。

2.ポマカントゥス属,ホラカントゥス属(ロックビューティーを除く)のヤッコは入れない。

3.モンガラ,ハギ,フグの仲間は入れない。

4.クマノミ,スズメダイ(デバスズメ系を除く)は入れない。


というものです。

これは全てメインであるクイーンズランドイエローテールエンゼルのストレスを最小限にし,水槽内の王様とすることで悠々とした姿を楽しみたいからでした。

この水槽構築計画は今でもそのままでして,この15年の間に数匹のクイーンズランドイエローテールエンゼルを飼育しましたが,全て水槽の主役として君臨していました。



特に3代目の時は10cm以下の未成魚を購入し,年月をかけて成魚に成長させる方針としたため,混泳させたヤッコはクロシテンとベルスのみ。最初の2年間は,ヤッコ系はクイーンズランドイエローテールエンゼルだけの1匹飼いです。14〜15cmに成長したところで,クロシテンの幼魚とベルスを追加しましたが,クロシテンの幼魚は小さかったため特にトラブルもありませんでした。

その後,2011年の夏にクーラーの故障で水温が34℃まで上がってしまい,会社から帰宅後全力で水温を下げましたが飼育魚が壊滅してしまった事故まで,4年以上ヤッコはこの3匹,それにホンソメワケベラとツユベラ,採集してきたセグロチョウ,アケボノチョウ,トゲチョウという固定メンバーの黄金期を楽しむことができたのです(無論,その間にゴンベ等の魚も入れて飼っています)。

まあ,そのためここ15年はポマカントゥス系のヤッコは1匹も飼っていないのですが,私はキートドントプルス属,特にクイーンズランドイエローテールエンゼルが好きなので支障はありませんでした。

現在,家のクイーンズランドイエローテールエンゼルは東京時代を除いて5代目(4代目は飼育5か月目に,新たに購入した魚が持ち込んだ全滅病で落としてしまいました)ですが,これも8.5cmの未成魚を購入したため,混泳させているヤッコやそれより小さいキヘリキンチャクダイ,チリメンヤッコ,ヒレナガヤッコとなっています。

成長速度の関係で,一時期(数か月)キヘリキンチャクダイとクイーンズランドイエローテールエンゼルが同じぐらいの大きさになった時,ややキヘリキンチャクダイが優位となりましたが,現在は一回り以上クイーンズランドイエローテールエンゼルの方が大きくなったので,水槽内の序列は計画通りとなっています。

予想外のこととしては,一時的にも最優位を経験したキヘリキンチャクダイが,再び第2位となったことで一時期拒食した上,現在もやや食が細いためバランス良く太っていない事です。まあこれも,この先自分の地位を受け入れれば長期的には解決するのではないか,と楽観的に考えています。



このようにどの魚をメインとし,それとの組み合わせで水槽の構成メンバーを決めておくことで,無茶な衝動買いや無謀な組合せを抑制できれば,魚達は2年もすれば購入時より成長し優雅な姿を見せてくれます。

この時大事なのは,2年後,3年後に魚達がどれぐらい大きくなるのかを想定し,その上で過密飼育にならないように水槽を作り上げる事です。

きちんと理屈に合った飼育をすれば,迎え入れた魚達は自然下程ではないにしろきちんと成長していきます。その事を踏まえた上で,水槽レイアウト(隠れ家の数など)や構成メンバーを決めれば,ストレスが少なく水質悪化も殆ど無いため,魚達は我々に癒しを与えてくれることでしょう。



また,構築計画を立てて無茶な混泳をしないようになってからは,白点病の発症は数年に一度あるかどうか,という程度で,大抵は1匹だけに10個にも満たない白点が付くだけです。採集魚や購入魚を迎え入れる際に淡水浴を行っていますが,ハダムシやイカリムシ系の寄生虫に遭遇する確率の方がずっと高いように思います。それでも一応銅イオン治療を行うのですが,3〜4日で完治し再発も無いのが特徴です。

ひょっとすると銅イオン治療を行わなくても,自然治癒する程度なのかもしれませんが,そこまで割り切ることは難しいのです。それに0.3ppm以下の濃度で治療を行えば,よほど過敏な魚以外重大な有害事象はまず起きませんしね。

これも飼育する魚達を適度に余裕のある数に抑えることで,ストレスをかけずに水質を含めた環境を一定にすることの利点だと思います。







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