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海水魚飼育における雑談38



40.硝酸塩について


「濾過とは」にも書きましたが,私は水槽中の硝酸塩濃度はあまり気にせず,測定も極たまにしか行いません。

これまでの測定値から見ると,私のメイン水槽では換水直後で約50mg/L(ppm),換水直前(大体換水から28〜32日後)で100〜150ppm (餌の量や入っている魚の数によって異なる)でした。また,90cm OF 水槽の立上げ時の記録を見る限り,1ヶ月程度であれば250ppm であっても特に有害事象は起きませんでした。



当然ですが,腐敗しやすい生餌を多く与えたり,魚達が成長して大きくなったりすれば,産生されるアンモニア量が増加しますから,その代謝産物である硝酸塩濃度は上がります。

したがって,水槽1本1本で硝酸塩濃度が上がるスピードや1ヶ月間に到達する上限値が異なるのは当然でしょう。この辺りは飼い主の方が横着をせず,水槽1本1本できちんと把握するべきです。

大部分の魚は,硝酸塩濃度が200ppm を超えても1〜2ヶ月間ならば特に影響は受けません。しかし長期間換水を行わないで飼った場合,反硝化フィルターを設置しない限り硝酸塩濃度は上がり続けていくため,鱗が小さくて所謂きめ細かな肌合いを持つキートドントプル属のヤッコを泳がせていると、体表粘膜の増生によって薄っすらと埃をかぶったような、またはごく薄く細かい粉が吹いたような状態(肌荒れと俗に言ったりしますが)を起こすことがあります。

この段階できちんと換水をしてやれば直ぐに元の健康な状態に戻りますから、このような場合まず換水して様子を見てみましょう(慌ててウーディニウム病だと勘違いして硫酸銅溶液などの治療を行わない方が無難です)。

しかしこのようなサインを見逃して放置しておくと、やがて鰓の呼吸上皮の変性・壊死に伴う窒息と,透過性の上昇による電解質流失によって魚を死に至らしめる事になります(飼育している魚の数が水槽に比べ少ない場合、このようになるには半年以上の猶予があるでしょうから、慌てずに機会を見て換水してやりましょう)。

逆に言えば,1ヶ月ごとに1/3程度の換水を行えば特に問題なく長期間海水魚を飼う事ができるのです。



昨今,サンゴ等の無脊椎動物を入れない魚水槽であっても,やたらと硝酸塩が高くてはダメで低く抑えようという事を言う方がいます。しかし定期的な換水を行いさえすれば,このように硝酸塩濃度は大部分の魚で気にする必要は無いのです。

確かにブルーエンゼルやクイーンエンゼルの青色退色等,一部の魚では体色に影響を与えると言われていますが,反硝化フィルターを設置して長期間換水をせずに飼うよりは,従来の強制循環濾過と定期的な換水の組合せの方が海水のイオンバランスが崩れにくいでしょう(もちろんサンゴ水槽のように,きちんと各成分を測定し,添加剤で常にバランスを一定に保つなら,反硝化フィルター+無換水でも構いませんが)。



このように数か月程度なら魚にとって問題ない硝酸塩ですが,水槽全体でみると問題が一つあります。それは硝酸塩増加によって水槽内に大量のシアノバクテリア(赤紫色のベタッとしたコケ)等のコケが発生する事です。私のメイン水槽には東熱製の30W UV殺菌灯を付けていますが,それでも1週間もすると壁面や底面(ベアタンクなので)に水槽壁面には紫色のシアノバクテリアが、底面にはまず光が良く当たるところには珪藻(茶ゴケ)が増えていきます。

ただ底面に関しては、時間がたつとその大部分が茶ゴケから緑ゴケが優位な状態と変わっていきます。問題はこれらのコケが大量に付着すると、ライトの光が吸収・利用されるために水槽内が暗く見えるようになることです。

そのため1週間に一度,水槽内のコケを落として物理フィルターの一番上のウールマットで受け止め,その1枚だけを交換するという作業を行っています。



しかしUV殺菌灯を付けていない検疫水槽(60cm OF)と90cm OF水槽は前面と左右の面だけしかコケ取をしないので,換水する際には底面や後ろの壁面にべったりとシアノバクテリアが付着した状態になっています。

これはメイン水槽にはゼンスイのダブルLEDライト2基を使用しているのに対し、90cm水槽ではコトブキのLEDライト1基、検疫水槽はニッソーのダブル蛍光灯1基しか使用していないため、光量が少ないためだと思われます。

おかげで吸い出すのに一苦労となりますが、まあ海水中の硝酸塩はシアノバクテリアやコケ等に取り込まれるため,見た目には濃度が下がります。また換水時にシアノバクテリアを水槽内から除去すれば,単純な換水以上に硝酸塩を減らすこともできますので,シアノバクテリアは邪魔ものですが役にも立っているのは確かです。



私は使ったことがありませんが,昨今は薬剤を使ってシアノバクテリアの発生を抑える事ができるようです。一昔前には,コケ抑制物質入りの人工海水なんて物も売っていましたが,今では廃盤になっています。

これらを使ってシアノバクテリアの発生を抑えた場合,硝酸塩はほぼ全てが海水中に溶けていることになりますが,実際にシアノバクテリアの有無でどの程度海水中の硝酸塩濃度は変わるか興味はあります。どなたか実際に比較実験を行ってくれないかな,と他力本願な思いを持っていますが,まあ魚水槽でそんなことを調べてくれる人はいないでしょうね。









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