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海水魚飼育における雑談23



24.かつてのニューウェーブ2

流動性生物濾過装置,プロテインスキマー,インバーター方式蛍光灯


今回も,前回に引き続き1990年代後半でT・M・Aで取り上げられた「海水魚飼育器具 ニューウェーブ」の製品の現状を見てみましょう。



まず流動性生物濾過装置です。流動濾過方式に関しては,「濾過とは」の「流動濾過式」で詳しく書きましたので詳細はそちらを参照してください。

1990年代のラインナップとしては,レッドシーから「メルリン」,カミハタが「シーストーム」,トワコーポレーションが「クイックサンド」,レインボー(現ナブコリミテッド)が「フルダイズFB-300」という商品を出しており,基本的に円筒型か箱型で微細な砂状の濾材を使用したものでした。

この砂状の濾材が何製なのか,最近まであまり興味が無かったのですが,昨今この濾材の入手がほぼ不可能(国内では)になってきたため調べてみました。

手元にあるレインボー用の濾材には素材名が未記載でしたが,最近入手したレッドシーのメルリン用濾材には「ケイ酸塩フリーの石英(二酸化ケイ素の結晶)媒体」と書いてあり,海外のWebでもシリカ砂(silica sand)となっていたのでようやく正体を掴む事ができました。私自身は何となくシリコン製かと思っていましたが,どうも違っていたようです。

最初の頃は密閉式という言葉が付いている場合が多く,エーハイムの密閉式フィルターのようなものかと勘違いした記憶があります。

理論的にも,また実際にも非常に優秀なシステムなのですが,この頃売り出された商品はポンプ停止時の砂状濾材逆流を防ぐ仕組みが不十分なものが多かったり,ほとんどの製品はどちらかというと小型で水槽の側面にセットするような使い方を推奨していたために物理濾過槽を間に設置することが難しかったりで,あまり流行らずに一時姿を消しました。

砂状濾材を使用した場合,逆流によるポンプ性能の低下以外にも,濾材を流動させることによるポンプへの抵抗が大きいため,メインの濾過槽とした場合にサイズ的に本来推奨されるポンプより1ランクまたは2ランク上のポンプを使う必要があるという欠点があります。

私の場合,既存製品ではサイズ的に不満だったため,60×45×45 OF水槽と90×45×45 OF水槽用のメイン濾過槽として,知人に大型のものを作ってもらい使用しています。

この場合,水中ポンプはレイシーRSD40または50,ナブコリミテッドNJ3000を使っていることからも,結構強いポンプが必要なことが分かると思います(既存製品には適合するポンプの性能が書いてありましたが,あくまで水槽の横にセットするような使い方の場合ですのでこれ程強いポンプは推奨していません)。

さらに個人的に重要と考えているのは,高い硝化能力を最大限に活かすため水槽内のエアーレーションは強めにする事です。私の場合,物理濾過槽の後のサンプ内でかなり強くエアーレーションを行っています。どれ程バクテリアを多く育むことができても硝化作用には酸素が必須なことから,私はOF水槽でこそ真価を発揮すると考えています。

現在は濾材が砂状からビーズ状のものに変更されて何社かが製品化していましたが,やはりあまり流行らないようです。

ビーズ状の濾材であればポンプへの負荷や濾材のポンプへの逆流等,砂状濾材の弱点をかなり克服しているのですが,同サイズだと砂状濾材に比べると濾過容量が少なさそうなので,性能的に十分なのかそのうち検証してみたいと思っています。



プロテインスキマーは現在,国内外を問わず様々な製品が出回っており,各種サイズが揃っていて水槽の大きさに合わせて選ぶことも楽になりました。

私が海水魚飼育を始めた頃は,日本に入って来ていたのは西ドイツ・サンダー社製のものぐらいで,かなりサイズも小さいものでした。

当初はオゾナイザーと組み合わせてオゾン殺菌の場としての使い方が主でしたが,殺菌灯に比べあまり広く使われていたとはいえませんでした。現在の繁栄ぶりは,やはり海水魚飼育の主流が無脊椎動物にシフトしてきたため,ベルリンシステムを始めとしたナチュラルシステムで飼う人の増加によるものでしょう。

この場合,アンモニアになる前の有機物除去が目的なため,役割としてはかなり変更されたと言えます。

私はこれまで1台も使ったことがありませんが,強制循環式で海水魚のみを飼うのであれば,あれば便利だが無くても特に問題なく飼う事ができる,という程度のものだと考えています。



インバーター方式蛍光灯は,20年ぐらい前は確かに家電製品としても流行りましたが,海水魚飼育器具に関して言えば現在はすっかりLED照明に取って代わられた感があります。

これはLED照明の方が発熱量も少なく,出た当初に比べ値段も結構こなれてきた事,また軽量コンパクトにできること等,インバーター方式蛍光灯より遥かにメリットが大きいためだと考えています。

私も去年末からメイン水槽の照明をLED照明に交換しましたが(これまで使用していた120cm用のダブル蛍光灯が既にほとんど売っていない事が大きいです),軽いので水換えの時など非常に便利です。また蛍光灯時代よりは,夏の温度制御が少し楽になりそうです。

無脊椎動物用にメタルハライドランプは今後も残るかもしれませんが,インバーター式蛍光灯は完全にLED照明に置き換わったように思います。



最後にヒーターとサーモスタットですが,これらは東日本大震災以降に空焚き防止機能付きの商品やクールファン用の商品が出るなど,多様化と高性能化が図られてきましたが,物がモノだけに今後も大幅な性能アップやデザインの変更は見込めないような気がしています。どちらかというとデザインなどはあまり変わらず,より小型になっていくような気がします。



さて2回に分けて1990年代の「海水魚飼育器具 ニューウェーブ」に対する所感を書きましたが,25年前ということを考えると確かに当時は海水魚飼育器具もここまで便利になったか,という思いがありました。現在の飼育環境や飼育器具は,20年後にはどのように思われているか是非見届けたいと思っています。







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